ドンキ MUGA ストイックPC4

まず最初に、ここはこの PC を紹介しようとかおすすめしようという記事ではありません。バッテリー交換にまつわる、この PC のためだけの非常にニッチな内容です。

改めまして、この PC はドン・キホーテのオリジナルブランドである情熱価格から出されている MUGA ストイックPC4 なるもので、型番は KNW14FHD4-SR、3万円ほどのノートPC です。記事中では MUGA4 と呼んでいきます。

MUGA ストイックPC4 / KNW14FHD4-SR

そして普段使いの PC として愛用して 1年少々経った頃、バッテリーがこの有様になりました(パッケージの破れは中身を確認するために切り開いたもので、膨張によるものではありません)。

膨らんだバッテリー

バッテリー駆動時に数分と経たず電源が落ちるだけではなく、薄型の本体の中でバッテリーがこうもパンパンに膨らんでいるわけですから、キーボードやらトラックパッドやらも内側から押されて盛り上がって正常に動作しません。
さくっと交換したいところですが、ここでマイナー機種であるが故の悩みに直面するというわけです。

互換バッテリーを探す

まずはこの PC の純正バッテリーはこんなものです。

MUGA4 バッテリー型番
MUGA4 バッテリーコネクタ

U3285131PV-2S という型番のリチウムイオンポリマーバッテリーで、コネクタは10Pコネクタ 9ライン結線、左から順に 赤赤赤赤黄ー白黒黒黒 です。

バッテリーがダメになったとき、それなりに高価な PC なら多少の出費に目をつむってメーカー修理に出すという正攻法も視野に入ります。しかし MUGA4 に対してそんな金に糸目をつけない姿勢で挑めば、せっかくのドンキの情熱に水を差してしまいます。
または、メジャーな PC なら互換バッテリーが世にいくつも出ていて取り寄せ放題ですが、こんなマイナーな MUGA4 の互換バッテリーが出てるなんてちょっと期待できません。

…と思っていましたが、いざバッテリー型番 U3285131PV-2S で検索してみるとこんな感じで Amazon の商品がヒットします(この記事を書いている時点でこれしかヒットしませんが)。

Amazon で販売

13550円… うーんたけえ…
とは言え MUGAストイックPC4 用と明確に謳っていますから、価格に折り合いが付けば確実な選択肢のようです。

とは言えなかなか高いので、海外に目を向けて Aliexpress で検索してみますとこんな感じです。

Aliexpress で販売

送料を入れて $40弱、ドル140円なら 6000円弱です。到着までに 2ヶ月強かかるようですが、実際こんなにはかからないと思います。なんにしてもこの辺を許容できれば Amazon の半額以下です。ノートPC のバッテリーがこのくらいなら充分射程距離内でしょう。

が!

どうやらコネクタの配線が違うんです。なんという落とし穴。
他にもいくつかヒットはするのですが、どうやらバッテリー本体は同じでもコネクタ配線にはバリエーションがあるらしく、せっかく安いのにピッタリくるのが見つかりません。残念ながらやはり MUGA4 はマイナー機種ということなのでしょう。

というわけで、今回は大人しくカネにモノを言わせて Amazon で購入しました。

安いバッテリーを使いたい!

バッテリーセルが同じなのにコネクタの配線が違うと言っても、具体的にどう違うのでしょうか。自分で配線を入れ替えれば済むなら話は早いです。というわけで、考察のため取り外した純正バッテリーを調べてみます。

まずはフィルムを剥いだ純正バッテリーの全体とセルの型番です。

MUGA4 純正バッテリー
純正バッテリーセル表示

続いて保護回路基板。

バッテリー保護回路基板
U1 HY2120-HB
U2, U3 MOSFET 8205A
R1,R2,C1,C2
R3
R4,R5,C3,C4

U1 は 2セルリチウムイオン電池用の保護IC HY2120-HB、U2 及び U3 は ドレインを内部で接続した Dual Nch MOS-FET 8205A のようです。

実際の回路については HY2120 Series のリファレンス回路ほぼそのままに、少し回路が付け足されたこんな感じです(多分)。

MUGA4 純正バッテリー保護回路(間違いがあるかも)

コネクタの赤と黒の配線はリファレンスのままです。C3、C4 はバイパスコンデンサを追加してあるのでしょうか。そしてバリエーションの肝と思われる白と黄の配線は、R4 と R5 を通じて PB- に落とされています。
白線に繋がる R5 は 1kΩ のようです。一方で黄線に繋がる R4 は、テスターのプローブを当ててる間にも値が少しずつ変化していくので、R と言いつつも温度検出のためのサーミスタのように思います。この 8.5kΩ は室温 25℃くらいの時での大体の値で、室温 31℃くらいでは 6.2kΩ 程でしたが、どういう特性のものかは不明です。

「ID」のシルク印刷

黄線は温度検出用の端子だとして、白線には単なる 1kΩ の抵抗がぶら下がってるだけです。基板のシルク印刷に ID と書かれているようですので、これは機器に正しいバッテリーが接続されていることを検出させるための固定的な抵抗値なのかもしれません。または、サーミスタの特定の温度を検出するための抵抗値だったりするのでしょうか。R4 と R5 がある比率になったら動作上限温度とか。

若干不明確なところもありますが、以上の通り回路は分かりました。しかし配線が多少違うバッテリーを MUGA4 向けに修整できるかについては、やはりその現物を見てみないと判断できません。特に R4 や R5 の値が純正と違うようなら線を入れ替える以上に手を加える必要がありそうですが、なんとなくそこらへんに違いは無くて色の順序を合わせるだけでいいんじゃないかと思ったり。とにかく現物が無ければ分かりませんから、次のバッテリー交換のタイミングで取り寄せて検証したいと思います。

Amazonバッテリー

参考までに Amazon で購入したバッテリーの情報を残しておきます。

MUGA4 互換バッテリー
HW-35100220

当然のことながら交換に問題は無く、うまく動作しています。

免責事項

本記事の内容は個人による解析の結果を含みますが、その正しさは保証しません。また、実際の配線の入れ替えを行っての動作実績もありません。引用している商品についてもおすすめする意図は無く、また品質を保証しているわけでもありません。記事を参考にした結果生じるいかなる結果についても、筆者は責任を負わないものとします。

リチウムイオンバッテリーは不適切な取扱いによって爆発や火災等、他人をも巻き込みえる事故を引き起こします。

機器とバッテリーはその両者の特性を合わせ適切に制御することによって安全を確保しています。バッテリーの配線を変更するなどによって本来適合しないバッテリーと器機を接続すれば、この安全は確保されません。
機器やバッテリーに何らかの手を加えての使用は、熟慮の上くれぐれも自己責任でお願いします。